構造を考える

住環境研究所がつくる木造住宅は、許容応力度計算による耐震等級3を目標としています。ここでは、2016年の熊本地震での建物の倒壊状況に触れながら、耐震等級3を目標とする理由をご説明します。

熊本地震の被災状況

熊本地震は、2016年4月14及び4月16日に発生し、益城町においては2度にわたって震度7が観測され、過去に例を見ない大きな地震により、建築物に大きな被害が確認されました。益城町における建築物への被害状況について建てられた年代ごとに見てみると、1981年以前に建てられた「旧耐震基準」の建物、1981年以降~2000年以前に建てられた「新耐震基準」の建物、2000年以降に建てられた建物の順に、倒壊率は28.2%、8.7%、2.2%となっていました。

1950年 建築基準法施行(旧耐震基準)
1978年 宮城県沖地震
1981年 建築基準法改正(新耐震基準)
1995年 阪神・淡路大震災
2000年 建築基準法改正(基礎・接合部・壁配置)・品確法施行
2011年 東日本大震災
2016年 熊本地震

倒壊、全壊した建物のほとんどが2000年以前に建てられた住宅でしたが、これは、1950年に建築基準法が施行されて以降、大きな地震を経験するたびに耐震基準が見直されてきたことが背景にあります。
しかし、2000年以降に建てられた建物も被害は0ではなく、耐震等級2というグレードの建物も倒壊した例が報告されています。

下記リンクの資料に、熊本地震における木造住宅の建築時期別の損傷比率が掲載されています。

耐震等級3のススメ/くまもと型住宅生産者連合会

ほとんど被害が無かった耐震等級3

建築学会による悉皆調査(全数調査)によれば、耐震等級3の建物は一部の軽微な損傷を除いて、ほとんどの建物が無被害であったことが確認されました。このように見てみると、地震後も住み続けられる家の基準が耐震等級3ということが分かります。

・耐震等級3 ・極めてまれに発生する地震による力の1.50倍の力に対して、倒壊、崩壊しない強度
・耐震等級2 ・極めてまれに発生する地震による力の1.25倍の力に対して、倒壊、崩壊しない強度
・耐震等級1 ・極めてまれに発生する地震による力の1.00倍の力に対して、倒壊、崩壊しない強度
・建築基準法の強度

こちらは品確法性能表示計算において定められた耐震等級の定義になります。新耐震基準で建てられた(=耐震等級1)建物でも、1回目の震度7の地震に耐えられても、2回目で倒壊したというケースも多くありましたので、現状に近い定義であると言えます。

許容応力度計算とは

耐震等級にはもう1つ許容応力度計算によるものがあります。実は、性能表示計算というのは簡易的な計算となっており、許容応力度計算こそがいわゆる構造計算と言えるものです。
性能表示計算に対して許容応力度計算は、個別に検討する項目の数が多く、より詳細な計算方法となります。また、許容応力度計算のみが3階建てに対応できる点も異なります。

出典:耐震等級3のススメ/くまもと型住宅生産者連合会

許容応力度の耐震3を選ぶ理由

住環境研究所では、許容応力度計算による耐震等級3を推奨していますが、下記の理由が挙げられます。

1.最も強度が出る計算方法である

建築基準法で規定される壁量を1.0倍とすると、性能表示計算の耐震等級3は2.0倍、許容応力度計算の耐震等級3は2.7倍と言われています。単純に計算すると、地震の力に耐える力が性能表示計算の1.35倍あることになります。

2.部材や金物が無駄のない適切な大きさになる

許容応力度計算は、梁などの全ての部材と金物を1つ1つ計算する方法ですので、サイズや種類を決める精度が上がります。計算の量は多くなりますが、その分無駄のない、適切な部材や金物を選定することが可能です。

3.実はプランの自由度が上がることがある

性能表示計算における壁倍率の上限値が5.0倍であるのに対し、許容応力度計算における上限値は7.0倍まで計算に入れることができます。つまり、許容応力度計算の方が家全体で必要な壁量に対して、必要になる壁の枚数を少なくすることができるということです。弊社で過去に計算した例として、同じ仕様の構造部材を入れたプランでも、性能表示計算ではNGとなり、許容応力度計算ではOKとなる場合もありました。

構造設計も自社で行う

構造設計を自社で行う設計事務所と、外部に依頼する設計事務所がありますが、住環境研究所は木造戸建て住宅は自社で構造設計を行っています。理由は、企画設計の段階から構造設計も同時に行うことにより、打合せ中のプラン変更に合わせて構造の安全性を随時確認できるためです。また、例えば設備配管の通しやすさを想定しながら基礎の形状を決めたり、断熱や気密を取りやすく部材の組み方を検討したり、現場の施工しやすさを考慮したりと、様々な分野と並行して設計を進めることもできます。

構造設計を自社で行う設計事務所と、外部に依頼する設計事務所がありますが、住環境研究所は木造戸建て住宅は自社で構造設計を行っています。理由は、企画設計の段階から構造設計も同時に行うことにより、打合せ中のプラン変更に合わせて構造の安全性を随時確認できるためです。また、例えば設備配管の通しやすさを想定しながら基礎の形状を決めたり、断熱や気密を取りやすく部材の組み方を検討したり、現場の施工しやすさを考慮したりと、様々な分野と並行して設計を進めることもできます。

強い構造を持続させる

強い木造の家をつくる為には、構造計算に目を向けるだけでは不十分というお話です。
1995年の阪神淡路大震災や、2007年の新潟県中越沖地震では、損壊した建物の多くで柱や土台の劣化が見られました。原因はアリや木材腐朽菌によるものです。つまり、どんなに強い構造をつくっても、年月が経つにつれて劣化してしまっては意味がないという事です。

住環境研究所では、原因の1つである木材腐朽菌を発生させない設計として、木材を濡らさない、壁内外の結露を起こさないような部材の選定や構成に配慮しています。強い構造計算はもちろん、その強さを持続させる設計を大切に考えています。


その他の知識・性能については、こちらのリンクからご覧いただけます。