概要
新しく浜松市中央区に開院された精神科・心療内科クリニックの設計事例です。
「来院される方の症状だけを診るのではなく、それぞれの想いや、人と人とのつながりを一つひとつ丁寧に積み重ねていく」という先生の診療方針を、建築の計画全体で表現すべく、プロジェクトを推進しました。
全体計画・配置計画
敷地は、北側に物販店、南側に児童広場の緑を臨む住宅地の一角に位置しています。隣接する調剤薬局、耳鼻咽喉科クリニックと一体的な景観となるよう配慮し、全体計画を進めました。
プライバシーと親しみやすさの両立
先生の「初めての方も入りやすく、かつプライバシーも保たれるアプローチにしたい」というご要望を実現するため、北側道路からエントランスにかけて多種多様な植栽を配置しました。これにより、来院者にささやかな心の安らぎを提供しつつ、道路から玄関までの距離を取ることで、視線への配慮と落ち着いた導入空間を確保しました。
北側道路からエントランスにかけて多種多様な植栽を配置
デイケアエリアの環境設計
当クリニックはデイケアを併設し、料理、創作活動、園芸などを織り込んだプログラムが実施されます。通所者にとって明るく活発な環境が望ましいことから、採光性に優れた南側へデイケアエリアを配置。児童公園の豊かな木々を遠景として取り込み、活動的な場にふさわしい開放感と明るさを実現しました。
デイケアルーム: 約30名収容、オープンカウンター付きの厨房設備を設置し、多様な活動に対応
効率的な動線計画
施設中央にスタッフルームと受付を集約しました。これにより、北側の診療エリアにも、南側のデイケアエリアにもスタッフの目が行き届きやすく、円滑で漏れのない運営を可能にする動線計画を意識しています。
診察室
外観デザイン
外壁には漆喰調の素材、軒天には木目調の素材を採用し、クリニックとしての親しみやすさや温かさを演出しました。一方で、黒のサッシフレームや屋根の破風・鼻隠しで輪郭を引き締めることで、信頼感とシャープさを併せ持つ外観デザインとしています。
内観デザイン
待合室: 柔らかな自然光を取り込みつつ外部からの視線を遮断し、安心感のある空間を創出
アプローチのエントランスドアを抜けると待合室です。北東面には大庇が張り出した大開口を設け、柔らかな自然光の取り込みを意図しました。また、グラデーションフィルムを施すことで外部からの視線を遮りながら、足元の植栽が感じられる安心感のある待合空間を創出しています。約30名を収容するデイルームには、オープンカウンター付きの厨房設備を設置。調理や配膳のほか、通所者の多様な活動に対応します。
内観は、壁・天井を白基調で統一しつつ、床材でエリアの特性を使い分けました。
待合・診療エリア: コンクリート調の床を採用し、落ち着いた雰囲気と信頼感を演出
デイケアエリア : フローリング調の床を採用し、活動しやすさと明るい雰囲気を演出
設計者メッセージ
「つむぐ」という先生の言葉に込められた想いの通りに、この建築が地域の方々や来院者に親しまれ、心の拠り所となるようなクリニックとなることを心より願っています。