長く安心し快適に暮らせる長期優良住宅
この家の敷地は、ご先祖より受け継がれた畑の中にある、ご両親が住む家に隣接した土地で、元々この土地には先代から住まわれていた実家が建っておりました。今回はこの古屋を解体して、息子さんご家族が住む新しい家を望まれました。
はじめに考えたのは実家との距離感や広がり感です。距離感と言ってもお隣ですから、建物を離すには物理的な限界があります。この時に大切なことは、日々の暮らしの中で視線が遠くまで抜けるようにすることです。目線が抜けるとは、空に抜けたり、お隣の庭に抜けたり、南側の隣家(ご実家)の生活感を感じさせないようにする配置計画が大切です。
また通常、家を計画するときには道路に平行であったり、隣家に建物が平行であったりすることが多いのが日本の現状ですが、西や東に少しでも角度が振れると日差しが上手く取り込めず、建物のエネルギーのロスは大きなものになります。
今回の敷地は東西南北が敷地の辺より45度に振れている土地ですので、そのまま道路やご実家に平行に建てていたらエネルギー的にも住まい手の健康面でもいいことはありません。幸いにも、建物を敷地に対して45度振って真南に向けても、全ての居室を南面させることが出来るほどの敷地の広さが有りました。
家を45度振ったことで、リビングやダイニングやキッチンからの視界の抜けが出来て、古屋の解体時に1本だけ残された、家族の想い出が宿る大きなもみじもまた、家のどこにいてもいつでも目の片隅にその姿が映ります。
また、夏の日射遮蔽のために1階も2階もしっかりと大きな屋根庇を出しました。この断層セットバックルーフがこの家の省エネを形で現わしています。採光や通風も考慮し、室内は1階も2階もこの断層セットバックルーフの勾配がそのまま厚さ300㎜のセルロースファイバーを包みこんで勾配天井として現れます。1階と2階は階段吹き抜けを通して、勾配天井で結ばれた視覚的にも空気の流れとしても一体空間となっています。
住まい手が健康で安全に暮らせる家は、『健康』『耐久性』『安全性』が素材と数値で判る、住まい手にも家にとっても優しい家です。